出不精をこじらせる

深夜時間帯は読書が捗る。枕元の照明は発光しすぎてちょうどいい雰囲気ではないと思って早4年。電灯の寿命が伸びすぎるのも考えようだと感じながら、変えるに至っていない。暗い中の雰囲気とかそういうので没入度が上がっているのだとしたら、今のうちはそのままでいいかなと思ったりしている。

 

明朝に近い時間に寝静まり、昼前に等しい時間に起床した。今日は1か月ルーティンでセットにしがちな散髪と書店に行く日と決めていて、だらだらと昼ご飯みたいなブランチを食べて準備にとりかかった。といっても、在宅勤務が長引いてまるで1か月スパンなんて実現していなかった散髪。伸びきった前髪がQOLを下げていることを確信しながらめんどくささに打ち勝てていなかったので、もはや3,4か月振りかもしれなかった。

 

「この後セットしてもらうし」と、寝腐ったライオンのたてがみみたいな癖のついた髪を雑に整え、衣類を選ぶ。書店のあるショッピングモールは、土日こそ混みあうものの平日の客入りはまばらで、現代社会の教科書に載っていたドーナツ化現象を直に感じられる。「着ていく服も平日はテキトーでいい」と、経験からこしらえた持論に倣って、テキトーな衣装に身を包んだ。

 

後は持つべきものを持って家からでるだけといったタイミングで、ふと気づいた。時刻は午後2時頃。だらだらしていたとはいえ、起床から準備に2時間以上経過していた。身支度をしている時からあった感覚だったけれど、間違いなく出不精をこじらせていた。

 

人との約束の直前に億劫になる感覚はだれしもあると思うが、それの超肥大化したヴァージョンのような、「別に今日じゃなくてもよくね」みたいな気持ちが大きい。外に出てしまえば、思ったより寒くない。それどころか、今日はいつもより気持ちのいい気候にも関わらず、本当に家から出たくなかった。繰り返すが、外に出てしまえばなんてことはないのに、だ。こういう心持ちの機微から、後回し癖が出来上がったり、なんか気持ちが上手く乗らなかったりするんだろうなと思った。

 

 

通っていた床屋の店先には「閉店します。長い間ありがとうございました。」との張り紙。営業時間を手書きで書いた張り紙のものとは違った、見慣れない綺麗な文字だった。半年くらい前に行った時は体調を崩して復帰したばかりなんだと店主さんが言っていた。

 

最近自分にとっても身近になった冥土のことを考えずにはいられなかった。確かに先週は開いていたはず。最後に一回切ってほしかったなと思うのは、いち利用客のエゴだろうけれど、冥福を祈るに祈れない真偽のほどが一生定かにならない人の生き死にで、自分の出不精を呪うことになった。

 

書店では、巣籠りするかの如く本を買い漁った。整理して増えた積読があるのにもかからず、今は今の自分に響くであろう本を見繕うことにした。帰宅後一息つきながら、美容室を予約して、明日の自分の出不精を解く呪いをかけることにした。