尊み

朝6時半、いつもより余裕のある起床が、この日は全く余裕がない。今シーズン最低の温度を記録した朝は肌寒さなんてレベルはゆうに超えた寒さで、学生時代住んでいた木造築40年超えの家での暮らしを思い出させた。ほんの一年前までは余裕でこなしていたのに億劫さが上乗せされて、ひたすらにダラダラと身支度を済ませる。時間ギリギリになって飛び出した外界は、ことさらに白くなった吐く息もあいまって雪もないのにしっかり冬を感じさせる街並みに見えた。これも北海道以外で初めて冬を迎えた、あの田舎道みたいだった。

 

約2か月ぶりに出勤の途につく。しっかり電車遅延を引くあたり、やはり何かに巻き込まれる才能がある。おぼろげな記憶でついた自席。周りはやっぱり在宅勤務中心で、空席の中にポツンといるのも忍びないし、そもそも自分の居場所はここじゃないと、奥に鎮座するぶち抜きの商談ブースにそそくさと移動する。前日に事前準備を終えていたこともあり、遅れた分の30分はすぐに取り戻すべく業務にとりかかる。この日はミーティングも普段より多く設定されていて、オンライン上ではないコミュニケーション機会も多くあり、「甲斐」を少しばかり感じることができた。

 

在宅でできる仕事を出社してやる分、少しかぶとの緒を締めて業務に向き合うことができたが、やっぱり3分横になってリフレッシュする時間は欲しいし、もろもろくゆらせる一息がほしいと感じる場面もあった。それでも一緒に働く人をより意識できる機会になったことは間違いなく、たまにはやらんとなという所感に至る。

 

久々にいる人物に温かい言葉をかけてもらいつつ、その日予定されていた飲み会の会場に足を運ぶ。主役の方とはそんなにお話しできなかったが、会を通して久々に話す人達や初めて話す人達もいて、少々お酒を多く呷ることになった。送別会ということもあって、朝までコースも覚悟してきていたのだが、各々散り散りとなり、これはそれなりに帰る流れだよなと1時間半の帰路についた。最寄り駅についたころには眠気と酔いも最高潮で、人もまばらになった終電後の喫煙所で1本だけたばこをくゆらせた。頭が痛い。やっぱり日本酒は効くなと手短に反省の弁を述べ、スイッチが切れて酔いを意識したその身で帰宅を目指すことになった。

 

帰宅後、明朝のダラダラに反して雑に素早く"ショット"で夜の身支度を済ます。リラックスできそうな音楽をgoogle nestにお願いし、気絶するように眠る。痛みはなかったもののどこかしらふわふわとした頭で意識を取り戻す。浅い眠りでありながら、8時間ほど寝ていたらしい。

 

ハードワークになった出勤と飲み会の翌日、体力回復という名の時間の浪費をしていると、もう昼過ぎ。こんな日もあっていいかと一日を諦め、何をするでもない贅沢な時間を過ごした。こういう時は、本を読むとか何か観るとかもしない。本当はできればいいんだろうけれど、それこそ作品も消費してしまう感覚があるから、自分の自然治癒に委ねることにしている。そんな折でも持てた確信は、今の生活に守られている習慣の尊さだった。そしてそれでも諦めに抵抗すべく一日も終わりを迎えそうなこのタイミングで、ブログをポチポチ打てる自分の無駄な意思に自嘲しながらも良くわからない成長を感じる次第です。