去る11月11日に文学フリマ東京37に行ってきた。東京流通センター、前々職の無味乾燥な展示会を開催していたのと同じ会場だ。鈍行と呼んで差し支えない遅めの東京モノレールで何駅か。途中には大井競馬場も望めた。
モノレール降車時から人の波がすごかった。アナウンスがある度に行ってみたいな~と指を咥えてみていたけれど、都合もつけられていよいよ行こうとした今回。すでに37回目の開催を迎えていた。
ところ狭しと出展ブースを配置した場内マップ、ひたすら出たり入ったりを繰り返しているほとんど激しめの波、おもいおもいの見せ方をした各ブース、人の群れも出店数も多い企業ブース、これは37回も続くしっかりとしたお祭りだなと思った。ガヤガヤ感はあるものの、したたかな熱気と真剣な視線が行き会う静かなお祭り。ちょっと不思議な空間だった。
気になった箇所もあった。先ずは各ブースの商品の値付け。かけた熱意や労力、本を作るための費用を鑑みて決して安くないことは重々承知しているけれど、気安く寄ってこれ面白そう~と飛びつけるハードルは超えてしまっている作品も少なからずあるように感じた。そして、各ブースの配置。ジャンルは出展者が選ぶのだと思うけれど、詩歌と写真どちらにも関わり合いがある出展者とか、ライトな純文学とか、エッセイ風味のライトノベルとか、配置の妙で一期一会の出逢いができなそうだと感じた。そして、そんなメタメタな考え方をして歩いていた自分が少し嫌いになったりもした。
そんな中、せっかくだから声をかけたい・話してみたい人もいたけれど、なんだか自分にはそういうことはできなそうだと勝手にしりごみした。長い間ファンとして追っているwebライターさんとか、知ってる著者さんとか作家さんとか。結局緊張してマトモにお話しできないだけなのに、近い業界にいた人間という言い訳を最大限活かしながら、「すごいなー面白そうなものいっぱいあるなー」と一般人のフリをしてフリマを楽しんだ。そうして、思っていたよりも疲れてしまった。
少し奥まったところにある広い喫煙所で一息つく。いよいよのワクワクにあてられていたのか、たまたまライターを忘れてしまい、近くに鎮座する男性に貸してほしいと声をかける。水色のBiCを手渡され、「僕も忘れてその度買ったライターがいっぱいあるんで、それお兄さんにあげますよ」と気安くくれてしまった。こういう時は、紙タバコを吸う人を見つけてすんなり声をかけられるのにと勝手に落ち込んでいた自分に、その気安さとやさしさは少しほろ苦かった。