下品なマッシュ

人生で何度か行く機会はあったものの、久方振りに美容室に行った。ともあれ初めて行くおしゃれ空間は風俗の待合室みたいな面持ちになるので、顔が下品だったかもしれないが、もともと品なんて関わり合いのないようなもんだったと思い直している。

 

担当の方と当たり障りのない会話をして、通常通りの接客をしてもらい無事散髪を済ますことに成功した。しかも、眉剃りもセットで"カット"してもらって、やっぱり人に整えてもらうのってすごくいいなと感じて率直にお伝えしたら、少し笑われることもできた。

 

矢継ぎ早に「人の眉毛剃るのって緊張しません?失敗したらとか思いません?」と問うと、「髪も一緒ですよ」と、もう一度笑われた後「でも、私結構好きですよ、眉カット。得意です」と付け加えられた。知らない人のマスク越しのドヤ顔を久々に見た気がして、おー凄い!みたいな平坦な相づちを打ったけれど、さすがプロ!くらいのおちゃらけを挟んでも良かったと少し後悔している。

 

仕事でもプライベートでも、実際に失敗したな~と感じた小さな後悔は、結構しっかり記憶するタイプだ。特に会話の中でもっと良い返しができたなという後悔は、1シーンに1つくらいあったりする。後から知己に飛んだ返しを思い出した時とか、こう言ったらもう少し話が弾んだなとか、そんな後悔だ。

 

面接なんかでは2つ、3つでは足りないくらいにそれが発生するから、ああまたその時がきてしまったんだなあと億劫な気持ちが芽生えてきた。なんにせよ、当たり障りのない会話だったが、生身の他人と面と向かって会話したのが久々だったなあとしみじみ思っている、したことのないマッシュヘアーになっている僕なのでした。