休日の決まった時間に楽しんでいる趣味も、長く続けたり、喜びを感じる瞬間が少なかったりすると惰性の延長になる。趣味を思い切って少しの間休むことにした。面白がって引退と宣ってはいるけれど、そのまま引退なんてことはおそらく無い。染み付いたルーティンのようにふとしたときにネットの記事だったり、アプリなんかをひらいたりしているから、何となく確信している。
とはいえ、土日の趣味による拘束が無くなると、殊更フリーダムで、家事も思いのほかはかどる。規則正しい生活にもなって、午前中に出かける準備も終えてしまう。勢いをそのままに脱兎のごとく家を飛び出して街に繰り出してみる。繰り返し喪に服してるみたいな日々が続いて1年半。また喪に服せとの通達が出る前の日。直前の日。何とはなくそういう意識があって、飛び出した足取りはやっぱり軽かった。
電車に飛び乗って気付く。今読んでいる小説も、最近新調したイヤホンも持たずに家を出てしまった。スマホの充電も心もとないから、今日は何か新しい時間の潰し方をしようと思う。左から右へ等速に動いてみえる景色を眺めてもそんなに目新しさは感じなかったけれど。間が空いたとはいえ、この景色を初めて眺めてから10年経つのだ。当たり前だった。
オタクの聖地に降り立つ。結局新しい時間の潰し方を考えているうちに、電波の少し飛ぶ川を越え、特に何もしないままに目的地についてしまった。少し混み合ったお店でスパイスをふんだんに使ったカレーを食べた。すっぱ辛いアチャールが箸休めのナリで、辛みを増幅させる美味しいカレーだった。再現する夢想をしながら一服。5人しか入れない喫煙室で奇妙な距離を保ちながら、明日から再び喪に服す儀式をした。
カレーを食べ、物販のスパイスを買って帰る。目的を達成してしまった手持ち無沙汰を埋めるには、自分はこの街を良く知らないなと思った。少し行ったり来たりしてみたけれど、目的がないと、この街はイラストに溢れた大都会の一部に過ぎなかった。余計なお金を使いたくないなんて倹約思考を持ち合わせると、こうも何をしていいのか分からなかった。
軽い足取りとは裏腹に、何となくずっと付き纏っている厭世感では、丸善書店に果物を置くこともできないんだとふと思った。と同時に、令和版檸檬を携えて、久々にブログでも書こうと思った。少し狂った現代では、何となくでは何もできないと突き付けられてしまった一日だった。