寒さは脳裏上のクラッカー ~リッツパーティしたい~

 冷え込み始めた秋の夜が好きだ。

 

一人暮らしを充実させるために動いていたことを思い出すからだ。

 

バイト前に回しておいた洗濯物を真っ暗い中干す。

 

あの時の白い息と虫も鳴かなくなった静寂とが脳裏に焼き付いている。

 

全部干し終わったら、家の目の前にある河川敷の入り口にあたる階段に腰掛けて、いつの間にか覚えていた煙草をふかすんだ。

 

今日も一日頑張ったな、明日何限からだっけ、札幌帰りてえな。

 

他愛のない反芻を経て、部屋に戻ってシャワーを浴びて寝る。

 

冷え切った部屋で眠るには身体も冷えすぎているからだ。

 

 

 真冬の買い食いが好きだ。

 

何も考えず勉強に打ち込めていたことを思い出すからだ。

 

部活を終えて塾で机に向かった後、4・5人の仲間と近くのセブンに立ち寄る。

 

身体を動かし脳を働かせた一日のご褒美に豚角煮まんを買って食べながら、帰路につく。

 

雪のない季節は自転車を漕ぎながらだから味気ないのかもしれない。

 

徒歩で通り馴れたあの道をゆっくりと歩を進めながら食べる肉まんが好きだった。

 

豚角煮まんは普通の肉まんより少し高くて高級だけど、肉がぎっしり詰まっていて格別だった。

 

 三連休の最終日、自堕落に過ごした戒めのように、家事をこなした。

 

「近頃は雨も降るし、風呂も入ったし、風呂場の乾燥を使って干そう」と思い立って、洗濯物を終えた。

 

少しの自己肯定感と微かな眠気を感じた。早出する明日の自分を慮って、近くの自販機に缶コーヒーを買いに行った。

 

思っていたより肌寒いから、ホットにしよう。

 

握り締めた家への帰路、ほんの30mの帰路だったが、前に書いた大学時代と中学時代の全能感を思い出した。

 

特段目的も目標もなかったけれど、何かに打ち込んでその日を終えた日々というのはしっかりと身に打ち込まれているものだ。

 

5年後、10年後、今やっていることの追体験をするのかなとも、ふと思った。

 

何となくしないという確信があるけれど、とりあえず生きていくために明日からも頑張ろう。

 

気付いたら11月です。立ち止まってる暇はないんだなあ、めんどくさいなあ。